「俺は、大学受験に失敗したんだ」
王子は、真剣な表情で話し始めた。
「第一志望だった大学に行けなかった」
王子は遠い目をしていた。
細めた目が、また素敵。
そんな話は知らなかった。
お母さんを助ける為に安定した公務員になりたいと勉強を頑張った、という話は知っていたけど。
「だけど、今はこうして幸せ。受験に失敗したからって人生が終わるわけじゃない。だからさ、気楽に行くんじゃあ~」
ガシガシっと私の頭を掴んで揺らす。
王子の優しさ、伝わるよ。
私のプレッシャーを軽くしようとしてくれている。
「大好き、王子」
「じゃ、その気持ちをキスで表現してみろ」
強引に腕を引っ張る王子にドキドキ。
そのまま、駐車場へと引っ張られる。
車の中は、まだ少し暖かかった。
大好きな匂い。

