でも相手がいつ来るのか分からないままでは、注文もできやしない。

「はあ…。腹が……」

 ぐりゅりゅりゅ~

…ちなみに私の腹の音では決してない。

「…どこか聞こえてきよった?」

周囲をキョロキョロ見回すと、桜の木の下に、一人の青年が倒れているんだか寝ている姿を発見した。

まさか腹を空かせて、倒れているとか?

この料亭にいるってことは、不審人物ではないだろう。

チェックは厳しいから。

しかしもしかしたら、この料亭の関係者かもしれない。

私はそっと近寄り、声をかける。

「おい、大丈夫か?」

「んっ…」

私の声に反応し、青年は顔をこちらに向けた。

…おっ、結構整った顔立ちをしているな。

年の頃は25歳前後というところか?

「何故ここで寝ている? 具合が悪いのならば、人を呼ぶか?」

「…ああ、大丈夫。天気が良かったし、桜も綺麗だったから、つい昼寝をしてた」

そう言って上半身を起こし、大きな欠伸をする。