「この度はお忙しいところ今日の席に集まっていただき誠にありがとうございます。」 決まり文句のような台詞でスピーチが始まる。 静まりかえった会場に流れる緊張感… でも桐生はあたしの方から一切視線を反らしてはくれない。 「今日は僕…いえ、俺からみなさんにお話ししたいことがあります。」 そう言って桐生はマイクを強く握った。 「俺はずっと小さい頃から婚約者という存在がいて、恋をすることが許されていませんでした。 でも俺自身恋に興味なんてなかったし、家が安泰ならそれでいいとも思っていました。」