「別に…物はいつか壊れるって言っただけだよ」
「そう…だね」
そう話しながら砂にかき消された相合傘に視線を落とす。
萌には何気ない会話に聞こえたかな。
でも俺の中にはもっと深い意味があったりもする。
俺は世界が刹那的なものだってずっと思ってたから。
人の愛情や信頼なんて知らずに生まれ育って…
周りに溢れていたのは感情を持たない無機質なものだけ。
幸い、家が裕福だったから欲しいものはなんでも手に入った。
流行りのおもちゃに新作のゲーム。
でもそういうものだって壊れたり飽きたりして結局自分にとって意味があったのかさえわからない。
だからきっと"これ"だって俺の中では大きな意味はないんだろうって思ってた。

