「ほんとに…?」 「嘘なんかついてどうするんだよ?」 桐生の手があたしの髪を撫でる。 「別にどうしても行きたいわけじゃないし。お前にそんな顔させるくらいなら行かない方がマシだろ?」 ハハッと笑う声が頭上から響いて、髪の毛をぐしゃっとされた。 「ありが…とっ」 あたしは桐生の制服をぎゅっと掴んだまま、大粒の涙をまたひとつ、ひとつと頬を伝わせた。 「だから、もう泣く必要ねえだろ。絶対行かないから心配するな」 あたしをなだめるその声は少しだけ… ほんの少しだけ…震えている気がした。