「助けてくれて…ありがとう。」
あたしは恭ちゃんの腕に抱かれながら小声でそう告げた。
恭ちゃんは「いいよ。」という代わりにあたしの頭をポンポンと叩く。
大きな手のひらで優しく包み込むように。
「来栖も嫌なことは嫌と言わないとアイツは何するかわかんねーぞ。」
そう言いながら恭ちゃんはあたしを椅子に座らせてくれた。
「じゃ、俺も行くな。」と軽く手を上げると恭ちゃんも桐生の後を追いかけて行った。
恭ちゃん…ありがとう…
あたしはその後ろ姿をただ黙って見つめ続けていた。
「ホント萌ってモテるよね。」
友ちゃんの感心したような声で現実に引き戻される。

