そう言って今まで黙って状況を見つめていた恭ちゃんが桐生の肩を叩いた。
「何邪魔してんだよ。今せっかくいいところなのに。」
桐生が不満そうに声を荒げる。
「邪魔も何も来栖が困ってんだろ。しかもここは教室だ。少しは見てる方のことも考えろ。」
「ほんとお前って奴は…。」と恭ちゃんが付け足すと、
しばらく考え込んだ後に桐生が大きくため息をついた。
「…わかったよ。ったく…本当にお前は真面目だな。」
そう言って桐生があたしを腕から解放する。
急に手が離れてよろけたところを恭ちゃんが片腕で支えてくれた。
「今は恭史郎に感謝するんだな。まあ次は覚悟しとけよ。」
「行こうぜ。」と恭ちゃんに目配せすると桐生は足早に教室を後にした。

