「別に。来栖が転んでたから助けてただけ。」
「ふーん…。」
桐生があたしを見下ろす。
あたしだと気づいたのかその表情はニヤニヤと笑っている。
「萌じゃん。」
「一ノ宮…様。」
さっきとっさに車を飛び出してきてしまったこともあってかなり気まずい。
「…さっきはよくも逃げてくれたじゃねーか。」
「あの…ごめんなさい…。」
「残念だったなー。せっかく須々木の前でキスでもしてやろうかと思ったのに。」
「ちょ、何言って…。」
周りからわあっと声が上がる。
男子の歓声と女子の悲鳴のような声が入り混じり、クラス中がもう大騒ぎだ。

