「なん…で…。」 後ろから抱きしめられた体は身動きがとれない。 「…それはこっちの台詞だバカ。俺のこと好きなのになんで逃げるんだよ。」 かすれた声とともに耳にかかる吐息。 桐生の黒い髪が頬をかすめた。 「それは…。」 恭ちゃんやミサトさんの気持ちを知って 自分だけ幸せになることはできないって思ったから。 「桐生には関係ないっ…」 でもそんなこと、言えるはずがない。 「はあ…?お前まだそんなこと言うわけ?」