そのへんの木の陰に
身を潜める。
こんなとこじゃ
すぐ見つかっちゃうけど…
下駄で急に走ったから
足が痛い。
「どこ行った!?」
「浴衣だったし
そんな走れないはず!」
「そのへんに
隠れてるんじゃない!?」
足音がどんどん
近づいてくる。
…やばい!
見つかる!!
「んっ!」
「しっ!
このまま屋台の
裏通って移動しよう」
神田咲哉はあたしの口を
ふさいでいた手を離し、
屋台の裏を歩き出す。
…何で来たの?
何で怒ってないの?
何で助けてくれるの?
聞きたいことは
たくさんあったけど、
汗だくの後ろ姿を見たら
何も言えなかった。

