ほんの少しだけ
触れた指先が
かえってもどかしくて、
心臓が騒ぎだす。
ただ、それと同時に
がっかりしている
自分もいた。
「咲哉おはよ~」
「おっす。
ん、なにそのバンソーコー。
ケガしたの?」
「あーこれ昨日ちょっと
転んじゃってさ」
「あらま~。
気を付けろよなー」
「うん。ありがとー」
…そうだ。
ただ"仮"で
付き合ってるだけだった。
神田咲哉は基本的に
誰にでも優しいんだ。
あたしは
特別なんかじゃない…。
「なに。
また新しい悩みでも
できたわけ」
「わっ!
赤坂君か…」
「あんた結構顔に
出やすいんだね」
「えっ」
赤坂君はだるそうに
歩いていってしまった。
顔に出やすいって…
あたしどんな顔
してたんだろ!?
てゆーかそんなんじゃ
ないんだから!
顔引き締めていかなきゃ…。

