大嫌いだから、ね? ③

「ご、ごめんなさいってぇ!」



 悲鳴のような斉木くんの声が聞こえた。

 佐藤くんの笑い声も。



「うわ、悲惨、速攻、玉砕?

 急いては事をし損じるって知らないのか、斉木。うぷっ」

「うるせぇ、笑うなぁ、佐藤! 腹抱えて、爆笑すんな! なのに、それでも手を放さないなんて、しつこいぞ、こらぁ!」

「っ・・・ぐふ、腹いた・・・横隔膜いたい」

「佐藤、おぼえてろよ! ---だけど!

 おれはまだ、最後まで言い終えてないんです、福田さん!

 だから、おれ、再チャレンジしますからぁ!」

「お前は、政治家かっ!」



 間をあけず佐藤くんがつっこみをいれていた。



 私は長岡くんに手をひかれながら、学校へ続く坂道を登って行った。

 ささやきと、視線を痛いほど感じる。

 どうしても、悪い方にそれを受け止めてしまいそうで、つい、うつむきそうになったとき、長岡くんが前を向いたまま、いった。



「顔をあげて、陽菜さん」

「長岡くん」

「陽菜さんがなにかしたわけでもないよ。気にしないで。

 堂々としていようよ、ね?」

「・・・。うん、そうね、そうだよね」



 いって、背筋を伸ばした。