「おはよう。傘、ありがとう、長岡くん」



 長岡くんとは、一緒に生徒会役員をしている。

 優しい雰囲気をしていて、話しやすくて、男の人に慣れていない私も、気負わずに話せる人だ。

 私が傘を受け取るのを待ってから、ハンカチを取り出して、頬についた水滴をぬぐってくれた。



「おはよう、陽菜さん。・・・けっこう、雨にぬれちゃったみたいだね。はやく学校に行って乾かしたほうがいいよ」

「平気。私、これでも丈夫だから」

「だめだよ、行こう」



 いって、傘を持った手をとって、歩き出そうとしたけれど、私はまだ光くんに腕をつかまれたままだった。

 ぐいっと、光くんが私を引き寄せた。

 とん、って、身体が光くんの胸板に当たった。

 一瞬、心臓がどくんとしたけど、すぐに別のことにきがついた。

 シャツ越しだけど、光くん、すごく、熱い。

 まるで、熱があるみたいに・・・。



「ねぇ、光くん」

「おまえ、長岡、あとからやってきて、いいところさらって行こうとするなよ!」



 私の言葉をさえぎって、光くんが言った。