「ありがとう、陽菜さん」
長岡くんは嬉しそうに笑った。
なんだか、こっちもつられて笑顔になってしまうような、そんな優しい笑み。
「ああ、見つめあって、わらってる!」
携帯を握りしめたまま、佐藤くんがさけんだ。
「うわ、うわ、海老原、もう回復不可能だよ」
「なにいってるんだよ、おれと、陽菜さんは友達宣言しただけだよ、ね?」
「うん」
私はうなずいた。
疑わしげにみていた佐藤くんだったが、すぐにいった。
「じゃあ、おれも、おれも、友達宣言する、福田さんと!」
はい、はいっと、手をあげる佐藤くん。
そんな彼を押しのけるようにして、斉木くんが前に出た。
まっすぐに、私を見ながら言う。
「おれは友達なんかじゃ、いやです。
そんなんじゃ、満足できねぇ。
おれは入学式のとき、壇上で話す福田さんを見たときから---っむぐ」
しゃべりだした斉木くんの口を素早く背後に回った佐藤くんが、仕返しとばかりに手でふさいだ。


