「誰が、独占欲だよ! けど、おまえらみたく、さかってるより、ましだ!

 ・・・さっき、みたぞ! 陽菜に顔近づけて、匂いなんてかぎやがって!

 この、変態が!」

「・・・だぁれが、変態だ、海老原!」

「おまえだよ、斉木!」
 


 光くんが即座に言い返す。

 明るい髪の人---斉木くんと、光くんが思いっきり、にらみ合う。

 周囲はその迫力に口をはさむことができない。



「だいたい、おまえと、福田さんは付き合ってなんていないだろうが! リサーチ済みだ。佐藤が大盛りカツカレーの食券一枚で教えてくれたぞ」

「---っ。佐藤の奴。・・・うるせぇよ! それでも、まるっきり接点のないおまえに近づく権利はない! さっきだって、めっちゃくちゃ嫌がられてただろうが」

「そっ、そんなことねぇよ。でしょ、福田さん?」

「そんなことある! な、陽菜?」



 矛先が一気に私に向いた。

 え・・・え・・・、なんて答えればいいの?

 顔が引きつる私。



「朝から、ばかなことしているね」



 静かな声がして、私に降りかかっていた雨がさえぎられた。



「はい、傘。ぬれたら、風邪をひくよ、陽菜さん」



 優しい笑顔とともに、落ちたままだった傘を拾って、私にさしかけてくれたのは、長岡くんだった。