「大丈夫か、陽菜!」



 上掛けを払いのけて、光くんが私のところに駆け寄ってきた。

 けがをした指先をぎゅっと反対の手で握り締めたまま、光くんに言う。



「お魚、こげちゃう。・・・光くん、止めて」

「了解」


 すばやく光くんがコンロを止めた。

 それから、私の手をそっと両手でつつんだ。



「痛む? すぐ手当するから」

「ん。ちょっと痛いかも」

「そこすわって」



 私は光くんが引いてくれたダイニングの椅子に座った。

 ぎゅっと押さえた指の間から、血がにじんでる。

 光くんはそれをみて、眉根を寄せた。



「深く切った?・・・薬とってくる」

「ごめんね。・・・光くん、きついのに、ごめんね」



 申し訳なくて、そういった。



「なにいってるんだよ」



 言いながら、光くんは私の頭をなでた。



「たとえ、きつくても、陽菜のためなら、おれ、動けるから心配なく。

 傷の手当ては慣れてるから、すぐにすむよ。

 そうしたら、また、おとなしく横になるから」

「うん」



 光くんの優しさが、とてもうれしい。

 熱のせいなのか、たくさんの言葉をくれる光くん。

 一言だって、忘れないで覚えておくね。