調理開始。

 シンクで野菜を洗って、切る。

 包丁はものすごく切れ味がよくて、ちょっと緊張した。すぱっと何でもよく切れそう。

 お鍋と、フライパンを取り出す。ねぎとあげのお味噌汁、ぶりは照り焼きにして、大根はふろふき大根にする予定。ほかにも何品かつくろうかな。

 ぶりを焼いていると、香ばしいにおいが、換気扇を回していても、部屋に漂ったのか、光くんがぴくりと動いた。

 顔をあげて、私の方にむける。



「うわ。うまそうな、におい。おれ、鼻かぜじゃなくてよかった。

 匂いがわからないと、おいしさを十分に感じられないしね。

 けど、陽菜は本当に料理が得意だよな。この前のお弁当もすごかったし。

 なんか目の前で料理しているの見れるなんて、感動する。

 陽菜って、いいお嫁さんに間違いなくなるって感じだよな」



 そんな台詞を思いっきり、計算のない、笑顔で言われたりしたものだから、私は思わず赤面してしまった。

 包丁で、大根の皮をむいていたのを忘れて・・・



「きゃ! ・・・痛っ」

「陽菜!?」



 指の先を、すぱっと切ってしまった。

 手なんて、切ったことほとんどないのに。

 じわっと、指先から血がにじむ。

 少しずつ、ずきずきと疼くように痛みだした。