「そこの、右側のドアが、おれの部屋」



 広いリビングの奥、二つ並んだ右のドアを光くんは指差した。

 少し、ドアが開いたままになってる。



「わかった。とってくるね」


「陽菜。散らかってるけど、いつもはきれいなはず。一応、掃除もするし」

「わかってるよ」

「ほんとは、こんな状態じゃない時に、陽菜におれの部屋に来てもらいたかったのにな」



 悔しそうに光くんが言う。

 私はクスッと笑った。



「また、元気な時にもお邪魔させてもらうから」

「ほんと?」

「うん」



 私は光くんのそばから立ちあがって、光くんの部屋に向かった。

 すぐそばの広いベランダに面した窓、カーテン越しの空はもう、すっかり暗かった。

 開いているドアから中に入る。



 ・・・うん、たしかに散らかってる。思わず、整理整頓したくなっちゃう。

 でも、ごみとかが落ちてるんじゃなくて、雑誌とかが無造作にフローリングの床におちていた。陸上の雑誌。それから、ノートと、教科書。

 机の上には、開きっぱなしのノートパソコン。携帯音楽プレイヤーも無造作に置かれていた。CD-Rがケースをひらっきっぱなしで置かれている。

 ・・・ほこりかぶっちゃうよ。

 なんだか、男の子の部屋って感じだ。でも・・・思ったよりは、きれいな方だと思う。