大嫌いだから、ね? ③

 
 公園をはさんで、私が住んでいる住宅地とマンションはとても近い。自転車だったから、あっという間についた。 

 まだ夜が来る前、ほの暗いマンションの周囲は街灯が灯り始めていた。

 だんだんと、夜が来るのが遅くなったとはいえ、薄暗い。

 明るく照らされたマンションのエントランスで、私は荷物を持ったまま、ようやく気がついた。



「・・・私、光くんのおうちの、部屋番号知らなかった・・・」



 自分の間抜けぶりに、しばし唖然とする。

 急いできちゃったし・・・光くんの住んでいるのはこのマンションだって知ってはいるんだけど・・・昔は、鬼門だったからなるべくこの周囲には近づかないようにしていたの。

 昔の光くんは、私のトラウマになっちゃうほどいじわるだった。

 いつも泣かされて、故意に避けていたけど、公園でばったり会った時に追いかけまわされたこともあるんだ。

 もっとも、それも中学生の最初の頃までで、今年、高校になってから再会した光くんは・・・びっくりするほど以前とはちがって、ぶっきらぼうだけど、優しい。

 今日だって・・・私のこと心配してくれたのかな? 風邪をひいているのに、雨の中、学校にきて、男子生徒に囲まれて戸惑っていた私を助けてくれた。

 ・・・でも、そのせいで、風邪がまたひどく悪化したみたい。



 さっきの携帯越しにきいた苦しげなせきが、耳に残っている。