「あ・・・」



 なんとか声を出そうと思ったけれど、声が出ない。

 かさかさに乾いた唇は、うまく動いてくれない。

 

「・・・無理にしゃべっちゃだめよ。唇、切れちゃうよ。つやつやだった唇が、痛々しいほど、かさかさだね。

 また、いずれゆっくりと話そう?

 今は、お休み、ね?」




 優しい、優しい眠りに誘う声。

 そっと、指先が瞼をなでて・・・、閉じてしまうともう、開けられない。

 まどろみに戻る中、私は聞いた。




「お休み。早く良くなってね。

 でないと私が許してもらえない。

 大好きな弟に、ますます、嫌われてしまう」



 おとうと? ・・・?

 それって・・・光くんのこと?

 光くん・・・姉弟いたんだ・・・。

 幼稚園から知っていたのに・・・そんなこと、ぜんぜん知らなかった。



 知らなかった・・・



 ・・・---