鈍感王子にご注意を


恵美ちゃんは目を見開いて俺を
見ていた。

「だって誠くん...私に話とか
あるんじゃないの?」

「ああ、それはまた別の機会で
いいよ。送るからさ。」

俺は席から立ち上がった。
いつもだったら恵美ちゃんも一緒に
立ち上がって俺の後ろを歩く。

だけど......

「恵美ちゃん...?」

「嫌...だ。帰りたく...なぃ。」

「.....え─?」

「まっ誠くんは...帰りたいの?」

少し目に涙をためて恵美ちゃんは
俺を見る。

そんな顔...反則だろ?
今日だってそんな大人っぽい格好して
大人っぽいメイクして.....

「分かった。まだ帰らない。けどとりあえず
店から出よう。」

じゃなきゃ周りの視線がヤバいだろ。

「っ.....分かった。」

恵美ちゃんは仕方がなく俺の後ろを
歩く。
...いつもより距離をとって。



会計を済まして俺達は店から出る。
いつもだったら繋ぐ手。
だけど今はなぜだかその手もすぐ
隣にあるのにうんと向こうに
あるような気がして怖い。