別に悪いところがあるわけじゃない。
よく検査しにきている。
だって俺の体は.....
「今回も大丈夫でしたよ。神楽さん。」
「はあ...よかった.....。」
母さんの体の力が一気に消える。
この瞬間が何よりもホッとする。
「ですがあまり無理はなさらないでくださいね。」
「はい。分かってます。」
そう言って俺と母さんは病院から出た。
「そうだ!帰りにお父さんの大好きだった
クリームパン買おっか♪」
すっかりテンションのあがった母さんは
そう言いパン屋に俺を引っ張る。
親父の大好きだった.....クリームパン。
「親父.....。」
親父は.....俺がまだ小学1年生のとき
病気で亡くなった。
脳に腫瘍があったらしい。
親父の親父。つまり俺にとっての祖父も
脳に腫瘍が見つかって他界したらしい。
だから俺にも兄貴にも危険な血が
ながれている。
兄貴はもう1人で検査にいけるといい
母さんの付き添いはなくなった。
でもいまだに母さんは俺にだけ
ついてくる。
兄貴より俺のほうが父さんに似ていると
周りから言われるらしく
不安なんだろう。
窓ガラスにうつった自分をみた。
自分でも分かるほど年齢を重ねるたび
俺は親父に似てきている。
鼻も口も目も.....親父のコピーみたいだ。
「慧ー!慧のクリームパンも買う?」
「.....。」
「慧?」

