─慧とはちっちゃいころから一緒だったから
慧がいない記憶はない─。

ちっちゃいころは毎日遊んでいた。

『心愛大好きっ♪』

ちっちゃいころはそんな風に慧は
いつもあたしにくっついていた。

あたしもそんな慧が好きだった。
だけど慧のスキとあたしのスキは
最初から違ったんだ。


「どーしたの?心愛ちゃーんっ。
ぼーっとしちゃって。」

ベトベトした手で慧はあたしの
おろした髪を触ってくる。


「やめろ!この女ったらしめ!」

「はあ!?いい加減それやめろっつーの。
しばらく恋愛は引退だ。」


...そんなの噓じゃん。

慧が女遊びが激しくなったのは
中学生にあがったときと同時にだった。


『俺、彼女できちゃった。』


あたしの気持ちも知らない慧は
得意そうにあたしにそういったんだ。

それから慧は年上から年下まで校内だけでは
収まらなく他校の女の子とまで
付き合うようになっていた。

付き合って別れて付き合って別れての
繰り返しばかりしていた。

そんなことをしている最低男なのに
評判はおちなくみんなの人気者だった。

あたしはそんな慧にどこかで
憧れていたのかもしれないな─。