キミに送る約束~空に向かって~


それが願いなんだから─...


─誰も何も言わずただ手術室の前でみんな
黙って座って何時間も経過していた

喋る事をまず忘れていた
まるでみんな言葉を忘れていたかのように
黙っていた

だけど急に慧のお母さんが口を開く


「みんな、帰っていいわよ。あたしと司が
残っているから。手術が終わったら
連絡いれるわ。暗くなる前にみんな
帰りなさい」

「え...でも「そうだな。みんな受験生なんだし
帰って勉強してろ。みんなの親だって
心配するだろうし。慧なら大丈夫だから」


司くんは、にっこりと微笑む

宗助くんと千尋は、困ったように顔を見合わせる


「あたし...帰らない」

あたしは、自分に言い聞かせるように言った

司くんは、あたしが言うことを
まるで分かっていたように見えた


「心愛。暗くなる前に帰ろ」

「やだ。帰んないっ!」

「心愛っ!」

「やだよ。あたしも一緒にここで待ちたい!」


まるで駄々をこねる子供のように言う

とにかく夢中で「帰らない」を言い続けていた


「心愛.....」


千尋は、困ったようにあたしを見る


「千尋達は帰っていて。あたし...慧のこと
待っていたいの。帰って家にいても
勉強なんかはかどらないし...
だからお願い...ここにいさせて」


司くんとおばさんにあたしは必死に言う


「うん.....俺も」


宗助くんが伸びをしながら言う


「そうね。おばさん、司くん。あたしたちまだ
ここに残ります」


千尋も言う