この日もあたしは、病院に向かう
慧があたしに言う言葉なんて聞かなくても
分かるけど.....それでも逢いたい
一目見れれば十分
お花屋さんで買ったひまわりを持って
慧の病室の前で深呼吸をする
どんな言葉を言われても負けない─...
病室に1歩足を踏み入れようとしたとき
聞き覚えのある声が聞こえた
「慧、お願いよ。手術受けて」
慧のお母さんだ─.....
「.....」
慧は、相変わらず無視
そんな慧を見て慧のお母さんは泣きだす
「お願いよ...これ以上お父さんのように
家族を失いたくないの...よ」
「じゃあ...1つ質問する」
「え.....」
「俺さ、どんだけ進行してんの?」
「っッ.....」
「手術受けなきゃ死ぬくらい?」
慧が鼻で笑う
慧のお母さんは何も言えないのか
黙ったまま
そして病室から駆け出してしまった
慧のお母さんは、あたしを見て一瞬びっくり
したように足を止めたけ
けど「ごめんね」とだけ言葉を残して
姿を消してしまった
「はあぁ――...」
慧は、あたしに気づいたのか盛大なため息を吐く
「いつまでそこに突っ立ってるわけ?」
「えっと...「誰もいないし入れば?」
病室を見渡すといつもいる患者さんは
いなかった
「あれ...?慧だけ?」

