「慧っ!」
母さんが両手で俺の手首を掴む
意外に先生は、冷静だった
慣れているんだろう。きっと。
「なあ、治せよ!今すぐ治せよ!」
「ですから、今すぐ入院の手続きをして
早いうちにしっかり治療をして
手術をして腫瘍を取り除きましょう」
「何が手術だよ!そんな簡単に言うな!」
「慧っ!」
俺は、そのまま診察室から出て行く
ちきしょう.....何が入院だよ...
何が手術だよ.....
そんな事簡単に言うなよっ.....
─トントン
「慧、入ってもいい?」
母さんの声が聞こえる
結局病院から家に帰ってくるまでの間
母さんをずっと無視し続けたまま
どうせ母さんが言う事なんて決まっている
さっきもしつこく車の中で言われた
「今すぐ入院して手術を受けよう」
どうせ今だってそうだ
「入るわよ」
─ガチャッ
勝手にドアを開けて母さんがずんずん俺の部屋に
足を入れていく
ベッドに寝転がったままの俺を見下ろす
「ねえ、入院しましょ」
ほら、やっぱり言うんだ
「お金ならほら!何とかなるから!お父さんの
保険金とか色々あるのよ?ほんっとーに
お金なんていざとなればどうにでも
なるのよ!?だから慧は、病気を治すことだけ
考えて治療しましょ!ねっ!?」
聞き飽きた.....この台詞

