「籍、って?」


再度、きちんと問い返すと、康博さんは笑うことなく、真面目な顔でまたもや「入籍だ」と言った。


「…う、そ、じゃないですよね?」


「何でそんな嘘をつく」


そりゃそうだ。
康博さんはそんな嘘つくようなタイプじゃない。


「じゃあ、本気で?」


「冗談で言うのか?」


それもそうだ。
だけど、突然過ぎない?


「どうなんだ」


まだ理解すらしていないのに、答えを急かす康博さん。

質問ぐらいさせてくれ!


「し、式とかは?」

質問で返されるだなんて思ってなかったんだろう。
康博さんはきょとんとしている。


「したいのか?」


「ええ、まあ」


私が遠慮がちに言うと、ふむと言ってから何やら考えていた。


「…あまり、したくはないのだがな。
写真では駄目だろうか?」


それはわかる。
康博さんは、裏の世界の住人だから。