びっくりした彼が耳から手を離したのは良いけれど……今何か聞きたくない言葉が聞こえた気がした。

「―誰が重いって?」

だからムッとして、彼の正面に回り込み、両腕を掴んで見上げる。

「えっ、いや、その…ホラ、今力をかけただろう? だから重力がな……」

あたふたとしながら言い訳するんだから、やっぱり可愛いし面白いな。

そんな思いが表情に出てしまったのか、彼の言葉がピッタリ止まった。

「…もしかして、からかった?」

「ううん。最初はちょっと怒ってた。でもキミの言い訳聞いているうちに、何か楽しくなっちゃった♪」

「本当に先輩ってサドだよな」

「そんなわたしが良いんでしょう?」

「……むう」

困った顔で言いづまる彼。

実は心の中ではこんなわたしが良いと本気で思っていることぐらい、とっくに見抜いている。

「ぬふふっ。キミって本当に可愛いねぇ」

「先輩って付き合い始めてから、意地悪度が増してない?」