稲葉さんと会ってから数日が経った。

月曜日にメールが来た以来、稲葉さんからの連絡は無い。

自分からメールをしようかと思ったが、何て送ったらいいのか分からずメールも送れないでいる。

(こういう時は何てメールすればいいんだろう?)と携帯を見つめていた。

そこへ携帯が鳴った。

稲葉さんからだ。

戸惑いながら電話に出る。

「もしもし…」

「もしもし、こんばんは。」

と優しい声の稲葉さん。

「こ、こんばんは」

「今大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「なかなか連絡出来なくてごめんね。ちょっと仕事が忙しくてさ」

「いえ、そんな…今もお仕事中ですか?」

「仕事が終わって今、家に帰って来たところ」

「そうなんですか。お疲れ様です!」

「優希ちゃんは何してたの?」

「私はボーッとしてました」

「何か考え事?」

「いえ…」

話が途切れてしまった…


「ところで優希ちゃんに報告があります!」と稲葉さん。

「えっ?報告ですか?」

(何だろう?)と胸が高鳴る。

「うん。まだ発表してないんだけど…新曲が完成したんだ!」

「ほ、本当ですか?」

「うん。ずっとスタジオにこもりっきりだったんだよ。だから連絡出来なかったんだ…」

「じゃー寝てないって事ですか?」

「まースタジオで仮眠した程度かな。でも毎回そんな感じだから平気」

「そうなんですか?じゃーこの前は貴重なお休みだったのに…本当にすみません」

「あっ、すみませんは禁止だよ!」

と笑っている。

それに、釣られて私も笑ってしまった。