優しい子守唄

部屋に入ると

「遅い!今日は11時には帰るって言ってただろう!!もう30分も過ぎてる」

と、直ぐさますごい剣幕を浴びせられた。

カーテンを閉めきっていて、明かりをつけていないこの部屋は薄暗く、本や服がそこら中に散らかっていて、そのど真ん中に置いてある小さなテレビだけが光を放っていた。

テレビの前でしゃがみ込んでいた少女は、憎悪に満ちた目でこちらを睨んでいる。

「…ごめん、思ったより長引いて」

苛立ちを抑えつつ、彼を宥めようとするも、それが無駄なことは分かっていた。