…それから15分後、二人は門番に身分証明を兼<カ>ねた指輪と第3王子からの招待状を見せ、リメスと名乗る20代半ばのメイドに、王子が居る部屋を案内されていた。


そして案内されて約10分後、リメスはようやく口を開く。

「ああ、ここです」

「そうですか、ありがとうございました」

キリスはそう言い、優雅に一礼する。
その動作に目を奪われたリメスは一瞬にして赤面し、少し経ったあとに慌てて早口で捲したてる。

「いえ、そのようなことを言われる程ではありません、そっ、それでは失礼させていただきますっ」

リメスはそう言ってから、もと来た道を全力で引き返す。

(…またか)

ノアは内心そう思い、リメスに少し同情した。キリスは日常になりつつあるこの光景の中でひとり優雅に微笑んでいる。
自分は関係ない、と。


「元凶が何を言って(思って?)いる!」ノアはそんな思いを抱きながらもキリスを横目で見、豪華なつくりをした扉をノックした。


そして部屋の中に居るらしいジークに呼びかける。
…勿論、部屋の周りに誰もいないことを確認したが、念の為に猫もかぶる。

「ジーク王子、ヴィクセント公爵家当主です。貴公<キコウ>の望むとおりキリスも連れてきました。扉を開けてもよろしいでしょうか?」

それから2,3秒後、ガタガタという物音がしたあとに「どうぞ」と言う声が聞こえた。