『悲しみワルツ3』

「おかあさん」
「おとうさん」
真っ暗な闇の中で
そう叫びながら、グルグル廻る

這い廻っている

意志の疎通なんて、できるわけない
と、思ってた

だけど

叫び声の合間に
「そうやね」
とか、少しずつ会話も成立するのが、わかって…

私のこころの寄りどころだった

夜勤明けで、睡魔に襲われてる時
大声のせいで、リビングに居られないおばあちゃんは、いつも一緒に事務所に座っている

「ねむいよ~仕事やだよ~」

って、甘えると
大声で

「働け~!甘えるな~」

とか

居室で、寝てもらおうと、添い寝しようとすると

手をずっと握りしめて、


来たときはボロボロだったのに

前の所では、誤嚥(食べ物を詰まらせること)が怖くて、お粥ばかりだったのを、普通食に変更した

栄養状態の良くなった体は、皮膚もつやが出て、歩けなかった足も、手引きすると、何歩か歩ける程に回復していった


ここでの生活に
おばあちゃんなりに、馴染んでもらっていた

なのに…

もともと
グループホームと
いう所は
認知症でも、自立生活が出来る方を支援していく場所で
(そんな人はいないけど)

おばあちゃんのように
大声を出し続けて、他の方に影響を与えるのは…


出て行ってしまう
出て行かされてしまう