side瞬


──２月１４日。
朝、知らない女がやってきた。
“瞬”
と、俺の名前を呼びながら。
彼女は、誰…？
「誰ですか…？」
そう言うと、彼女から笑顔が消えた。
そして、目にいっぱいの涙を溜めていた。
我慢しきれなかった涙が流れたと同時に手から落ちた紙袋。
そして、彼女は走ってどこかへ行ってしまった。
一体、何だったんだろう？
紙袋の中身を出すと、トリュフとカードが入っていた。

【瞬へ
大好きだよ！　
奈央より】

そう書かれたカード。
“奈央”という名前に、胸がトクンとなる。
そして、トリュフを１つ食べた。
「……っ！」
全て、思い出した。
どうして忘れてしまったのだろう？
忘れないと、思っていた彼女を。
一番大好きで。
大好きで仕方ない彼女のことを。
……奈央の、ことを。