【完】最初で最後の恋

病院に行くと、瞬の病室は騒がしかった。
開きっぱなしのドア。
ゆらゆらとその中に入る。
「奈央ちゃん!瞬、奈央ちゃんが来たわよ!!」
「奈央ちゃん、瞬に声かけてあげて!!」
「……しゅ、ん…?」
あたしの目に入ったのは…
苦しそうな、瞬で――……。
一気に涙が、溢れだす。
「な……おぉ……」
弱々しく、今にも消えてしまいそうな声であたしの名前を呼ぶ瞬。
「泣く…な」
あたしの手を握ろうと、無理して手を動かそうとする瞬。
あたしはそっと、瞬の手を握る。
「な…お。笑…って?」
「瞬っ!」
「奈央、の…笑顔…み、たい…」
乱れた呼吸の中で、そう言う瞬。
あたしは涙でぐしゃぐしゃの顔で、瞬に笑顔を見せた。
「…奈央は、…笑顔が、似、あう…」
そう言って、目を細める瞬。