するとラッコくんは静かに語り始めました。





「ああ。ど、どうやら僕は、あしかくんと初めて、会ったあの日、崖から、落とされて、岩にあたって、記憶を、失っていた、みたいなんだ。
でも、さっき貝を、取られそうになった、ショックで、全部思い出したよ。」





「そのことなんだけど、ラッコくん…ほ、ほんとうにゴメンなさい…グスン…
ぼ、僕、いつも小さい友達としか遊んでなくて、グスン、その、初めて僕くらいの大きさのラッコくんと遊べたのに、グスン…
いじわるばっかりしちゃって…」





「あ、あしかくん。僕は、ぜ、全然、怒ってないよ。
あしかくんには、か、感謝してるんだ。
実は僕、す、水族館で、飼われてて、でも病気に、なっちゃって…
もう長くないって、い、言われて、他の、生き物に、もうつるから、あの崖、から、この海に、す、捨てられたんだ。
そ、その時、あまり、動けない、ぼ、僕の為に、エサも、いっしょ、に、投げて、くれた、んだ、と、お、思う…」





「え!?ひ、ひどいよ…
今まで飼っておいて病気になったら捨てるなんて!
最期だけ海にかえそうだなんて、そんなの人間のわがままだ!
ってラッコくんが、最、期!?」





「うん。あ、あしかく、んは、僕の、知らな、かった、う、海をた、くさん、教えてく、れた。
す、ごく、楽し、かっ、た。
こ、この、ぼ僕の、貝を、うけ、とっ、て。」





ラッコくんはすごく苦しそうにそう言いました。