Sugar × Spice Ⅲ〜ハジメテは年下幼馴染〜



「ただいまぁー」

「お邪魔します」

その夜、優兄ちゃんとお姉ちゃん夫婦が我が家にご飯を食べに来た。

優兄ちゃんのおばさんも揃って、賑やかになった。

お姉ちゃんは出産準備のため来月、うちに戻ってくる。

だけどお母さんと私は昼間仕事でいないから、昼間はおばさんのいる優兄ちゃんちで過ごすという。


「それにしても楽しみねぇ、早く孫の顔がみたいにわぁ。ねぇ、由美子さん」

「そうねぇ、美菜子が母親になるなんて、まだ信じられないけどね」


おばさんは嬉しそうに言った。


お母さんは奮発してお寿司なんか頼んじゃって。

テーブルには、お姉ちゃんの好きなものばかり並んだ。
優兄ちゃんの好物の肉じゃがもある。


私はビールやお茶をテーブルに運んだ。


「他に必要なものはないかしら?

ベビーベッドは買ったし、ベビーカーも…あ、タンスは?タンス!」

「お義母さん、もう置く場所ないですよ〜」


お姉ちゃんはいつのまにか、おばさんを“お義母さん”と呼ぶようになった。

「親父はまだ仕事?涼は?まだ大学から戻らないの?」

優兄ちゃんがおばさんに向かって聞く。


「お父さんは今日は遅くなるって。

涼は、後で行くって言ってたから置いてきたんだけど…

咲ちゃん、ちょっと呼んできてくれる?」

そう頼まれて、私はしぶしぶお向かいの涼の家に向かった。



「涼ー、優兄ちゃんたち来たよー?」


玄関先で、そう声をかける。

だけど家の中から返事はなく、静まり帰っていた。


もしかして寝てるとか…?


そう思って私は涼の部屋に向かった。

「涼?開けるよ?」


2回ノックして、ドアをゆっくり開ける。



“あれ…いない”

部屋に涼の姿はなかった。

“お手洗いかな…?”


私はゆっくり部屋の中に足を踏み入れる。


前来た時より、散らかっていた。

よくわからない参考書とか、ファイルとか…。


見ても私が分からないものばかり。


やっぱ勉強、大変なんだろなぁ…


そっとベッドに寄りかかるように座りこむ。


ベッドの下……まだあの雑誌あるのかな…。

あの雑誌見て、涼はどんな気持ちになるの?

あんな風船みたいなおっぱいした、ナイスバディな外国人モデル見て…


触りたいの?ああいうのが好みなわけ?


どーせ私の胸なんて、微々たるものですよ。



…そっとベッドの下を覗く。


「あれ、これ…」

その雑誌よりも手前に、茶色い袋があった。


これは確か、涼が友達に借りてたDVD。

レポートの教材の、サイレント映画って言ってなかったっけ?