「梓ちゃんの母親に懇願されて、ここ来たんだよ。娘が帰って来ないーって」


千崎は馴れ馴れしく私の隣に座り、人懐こい笑顔を向けた。


「なんで要の家知って・・・・・!!」

「千崎・ネットワーク。なんてね」

「ふざけないで!早く出てってよ!ここ要の家なんだからね?!」


私はすぐに立ち上がり、要の携帯に連絡する、はず、だった。



「あと、二日。ねぇ、準備はできてるの?」


いつの間にか私は千崎の腕の中に居て、情けなくも、その体を預けていたのだ。


「・・・・・準備ぃ?」

「だって、俺と君は結婚するんだよ?色々あるでしょう?準備が」


思わず、嫌悪丸出しの顔を向けてしまう。

あぁ、しまった。仮にもレディーが。



「あんたと結婚する気なんて、全く微塵も無いわ。早く離して」

「“緑さん”はもう本城に会ったみたいだけど?早速、婚約の解消を持ちかけてるみたい」

「それ、要にもう聞いたわ。そんなので私たちが動じると思う?」


千崎を睨みながら、私は言い放ったつもりだった。

少しは引くかな、と思いきや、千崎は不気味に笑いはじめたのだ。



「くっく・・・・・最高、」

「・・・・何笑ってんのよ、気味が悪いわね」


千崎は、その綺麗な顔を緩ませて、私を見下ろした。