ともかく


「之木さん、」


私にとっての救済は、また1人と増えたらしい


「楓って、呼んでいい?」


にこりと笑って彼女に語りかけ、床に置きっぱなしだった布に手をつけた

そういえば、さっさと縫わないと帰ってきた百合亜に怒られちゃう

それに、文化祭もうすぐだもんね

意気込んだ私に聞こえた声は


「よろしく、”紅鈴”―――」


明らかに嬉々としたあの穏やかな声だった