何故かそれが不安でたまらない

言ってしまえば等価交換のような関係。利害が一致しないとどうにもならないような、地に足の着かない、落ち着けやしない関係だった


不確かが嫌なのに、私は彼の隣にいる


『アカリ、ちゃんっていうの?よろしくね』

『え?・・・・はい』


胡散臭い笑みを浮かべながら握手を催促する。その姿はどこか、私に似ていた

一瞬にして無くなった気がした彼への壁。それはどう考えても錯覚で、確信づいた物ではないことくらい分かっているけれど、弱った精神状態では何が正常なのかも考えられなかったらしくて


『俺を知らない人間と一緒に居たいんだ。だから、君の時間を、君をくれる?』


今考えればすぐに分かることだったのに、それでもあのときの私は


『・・・分かった』


逃げたいのならいっそのこと、この人に身を委ねればいいのだと考えてしまったのだ



「アカリちゃん?どうしたの??」


不思議そうに顔を覗き込む橘くん

甘い顔立ちをしている彼に見つめられて、思わず体を後退させる。すると一層不思議そうな表情を浮かべたので、息を吐いて、彼の問いに答えた


「・・・・・橘くん」

「ん?」

「近い」

「うぉ!ごめんね!!」


人と接触するのって、アカリちゃんくらいしかいないから


苦笑いしながら右手で項を掻く。どうやら彼は人間と居たいくせに、1人の時間が多いらしい