たった一度の良心が、私にとっての重荷になっていた


先日見た彼の顔を、私はまだ覚えている。だけど、それだけ。見たな、という認識だけ


『すごく親切な方ですね!』


なのに何で、こんな扱いを受けなくてはいけないの?





こんなにも日常から逃げたいと感じたことは無い。私にとって、それほどの苦痛はなかった


当の本人にはそんな気は無いのかもしれないが、私にはどうしても堪えるモノが存在していた


『あの、大丈夫ですか?』


ある雨の日。そう遠くはない過去のこと

目の前で血だらけになりながら苦し気に横たわっていた男の子を、介抱した。単に当たり前の行為をしただけだ


傷はそれほど深くもなくて、それでも血の量が多い。すぐさま近くのコンビニで救急セットを購入し、あちこちにある傷口を止血した


その後で途中見つけた、男の子の仲間のような人に押し付けて連れて帰ってもらった



ただ、そう。言ってしまえばそれだけのこと


だけど何故か、彼にとっての私は神のように崇拝する人間になってしまったらしい


彼は私を見つけるたび、とても高貴なものを見るような期待に満ちた瞳をする。それが酷く、心をざわつかせて