百合亜の言う”アイツ“とはもちろんこの男のことだ。ちなみに、百合亜たちや庵、香恋さんにさえ数日前の出来事や、この男との関係性を言っていない

なおさら怪しく思うだろうが、私のことだ。また変な交遊関係を増やしたのだろうと思っているのかもしれない

はたまた、


──────警戒して心配してくれているか、そのどちらかなのだろう


それでも私は、これ以上心配を掛けたくないから黙ったまま

彼との交遊を図っていたりもする


「こんにちは、達貴くん」


なぁんて、建前だけど


目の前の彼に義務的な挨拶をする


もう私の前に姿を見せに来ることはないと思っていたのに、たったの1日足らずで予想を裏切って彼はまたその瞳に私を入れた





『穂束さん、誰に連れていかれてるの?』

『か、神原く・・・・・』


颯人の浮気相手(と私は解釈している)の女の子達に腕を引かれて、人気のないところへ連れていかれる最中、意外にも彼は私の名前を呼んだ


この男なら絶対に私のことを放っておくだろうと思っていたが、とんだ勘違いだったようだ


まさか自分から首を突っ込みに来るなんて


この人はあのときの私を見て、傍観を決め込むのだとばかり思っていたのに