彼はまだ、忘れていない
その事実だけで、この苦しいほどの感情が解放されるような気がした
何故だか、分からないけれど
「・・・・思ったより人間なんだ」
「女神なんて、あるワケないじゃないですか。私だって人間です。人を羨む気持ちもあれば、憎む心だってある」
「へぇ」
嘲笑するかのような視線が、私を責める
どうでも、いいんだ。私は私だと、あのときアイツは言ってくれた。それだけで、救われた
あの日の幻想があれば私は、別にどうだっていいのだ
誰から蔑まれようと、見下されようと、馬鹿にされようと
あの日だけは、本物だと知っているから
「だから女神だなんて、呼ばないで下さい」
だって、その言葉は
私にとって、呪いだから
「・・・・穂束さんさぁ」
「何でしょうか」
「颯人の浮気、知ってんだろ」
確信めいたその声色。目の前にいるこの人は、アイツの友人なのだろう
じゃないと、こんな風に私に話掛けない
そう断言出来るのはきっと、彼の声が鋭利で、その瞳があまりにも強いモノだったから

