粉々になったはずのアイツへの恋情が、まだ私の心の中に残っているのは、どうやったってあの人のおかげなのだろう


「紅鈴、行くわよ」

「・・・・・あ、うん」


思わず先に行ってて、と声を出した


文化祭から気づけば1週間。私達の仲は確実に深まっていて、いつの間にか私は、颯人のことを前ほど考えなくなっていた


それもこれも全部、


「添川、これ頼む」

「はあ?俺??」


やっぱり、庵のおかげだ

先生に雑用を頼まれている庵を見つけ、頬をゆるゆるとさせる私がいることに気づいた

いつの間に、庵を見つけるだけで嬉しくなっていたのだろう

単純なその思考に自分自身呆れつつも、久しぶりに感じる感覚に、心を弾ませる


こんなに穏やかな気持ちになるのは、颯人と付き合う前以来かもしれない


アイツと一緒にいた頃は、心が休まる時間なんて在って無かった様なものだったから、余計にそう感じるのかもしれない