”生徒会室”そう書かれた教室に足を踏み入れるのは、もう何回繰り返した行為だろうか

当初は全くといっていいほど関係がなかったのに、それでも毎日ここに来ていた


思えばあの日から、彼女と出会った日からずっと入り浸っている気がする


「こんにちわ、香恋さん」

「―――――、あら」


嬉しそうに顔をほころばせながら、ゆっくりと振り向く彼女

彼女は、とても綺麗だ

穢れを知らず、温室の中で育ったような彼女。だからこそ傷つきやすいのだと、彼は言っていた

私と違って、綺麗だ

だけど、そんな彼女にあこがれや羨望を感じるワケではない

彼女が、苦労してここにいるということを知っているから


彼女―――――、福本香恋は

とある貿易社の、社長令嬢なのだ


「あかり、遅いわよ」


柔かそうなブラウンの髪が空中で舞うごとに、彼女からいつも香る控えめな薔薇の匂いが一緒に舞う

彼女が微笑めば、誰もが見惚れるであろう


そんな、笑顔を向けて、彼女はいつも嬉しそうに私の名前を呼ぶ