だって、この男はいつも彼女を苦しめる

ストーカーってワケじゃないけど、彼女が誰にも見られないよう隠れて泣いていたことだって知っている

ヤツは、彼女に包み隠さず堂々と浮気をしていたのだ


『紅鈴、好きだよ』


それなのにも関わらず、相変わらずヘラヘラ笑ってあの子に近づく男

紙きれを差出すような愛を囁いて、まるでその行為は彼女を侮辱しているかのようだった


『(橘、颯人・・・・・)』


彼女を見る傍ら、あの男にも目を向けるようになった

彼女には何もしてあげないクセに、他の汚い女達には何でもしてあげている男

憎かった

これでは、彼女は幸せになれない

こんな男の手に渡るくらいなら、いっそのこと誰か他の男の元へ渡したかった

私が、幸せに出来ないから