「何だ、プロポーズは受けてくれないのか?」

低く耳元で囁かれると、背筋がゾクッとする。

「教え子に手を出すなんて、いけない先生ですね」

「何を今更」

まっ、それを言われると本当に今更だと思う。

先生との出会いは、高校に入学してすぐのこと。

部活を見て回っている時、科学室で科学部の説明会に参加した。

そこではじめて先生を見て、淡い恋心を抱いた。

けれどそんな女の子は私だけじゃないってことは分かりきっていたから、憧れだけにとどめておこうと思っていたのに。

説明会が終わった後、先生に呼び止められて、科学部に入らないかと誘われた。

「…何で私にだけ、言うんですか?」

「お前さん、中学ん時も科学部で活躍してただろう? ウチの高校に入学したのを知ってから、眼つけてたんだ」

確かに中学校でも科学部にいて、活動はしていたけど…。

「でも先生、その言い方っていやらしく聞こえるんで、他の子には言わない方が良いですよ」

「いっいやらしい? …そう言われてみれば、そうかもな」