「それよりサクラ、なんか言いに来たんじゃねぇの?」

「へっ?」



なんで分かったの?と言わんばかりに遥翔を見ると、「顔に書いてあんだよ」とデコピンされた。



「で、なに」

「あの…今日、生徒会ある?」

「あるもなにも、毎日やってる」




…ですよね。

分かっていた答えだけに、心は楽だったものの。ダメか…、という諦めがすごく大きくなった。




「サボりたいわけ?」

「え、いや…そういう訳じゃないんだけど」



思わず目を泳がすと、ズシッと肩にかかる重み。



「なにー!?桜羅帰っちゃうの!?」

「うっ!と、透くん…重いから……」

「あーごめんねぇ!」



反省する気ゼロでしょ…。



「なにやってんだよぉ、みんなして」



騒がしい透くんに気づいたのか、みんながデスクの周りに集まる。



ただ1人…。
唯だけが、窓の外を見ていた。



唯って、不思議な人…。
遥翔も十分不思議なんだけどね。




この温かい部屋の中は、今まで生きてきて凍りついた私の心をゆっくりと溶かしていってくれているようだった。




「ごめ、遥翔。やっぱなんでもない」




今日はここにいよう。
帰りたくない、帰りたくない、あの家に。


だから、少しでも長く……この温かいみんなのいる部屋にいたい。