…いない。
さっきからずっと走り回っているのに、遥翔の姿が見つけられない。


息を切らして足を止めた。




「桜羅?」



この声…



「相原くん……」

「ひなたでいいって」



不思議そうに私をひなたは見つめていた。



「それよりそんな走ってどうした?」

「…遥翔、見なかった?」

「遥翔ならさっき聖堂で見たけど…」

「分かった、ありがとう」




私はまた走り出した。



愛なんてしらない
お金なんていらない


……強がりな私を、変えてみたい。




遥翔、あなたのせいだよ。
私がこんなにも必死に走るのは…。




あなたが、私の心を揺さぶるから
あなたが、強いから……追いかけたくなる。




手の届かなかった、大っ嫌いなあなたに、どうしようもなく憧れてしまうの。






__バンッ






「遥翔!!」

「お前…」



私に気づいた遥翔は立ち上がり、こちらへ来る。



「勘違いしないで!!!」



大声を出して、私は遥翔の足を止めた。



初めての感情…。

初めて、誰かに甘えたいと思った。
初めて、あなたの役に立ちたいと思った。



「私は、秘書の仕事を果たしに来ただけなんだから…」



強気な瞳でキッと睨むと、喉を鳴らしながら遥翔は笑い、私を抱き締めた。






「おもしれー女」


そして、そう囁いた……。