ずっと黙っている遥翔に気づく。
ハッと我に返った時は、もう遅かった。




「…ごめん、遥翔」

「お前の過去に何があったかは知らないし、知るつもりもない。ただ、察してはいる。俺は桜羅にとってこの生徒会室が居心地のいいものになったらいいんじゃねぇかって思ってる。それだけは忘れんな」





それだけ言うと、遥翔は生徒会室を出て行った。




5分くらい本心状態が続いた。

頭の中で駆け巡る、遥翔の苦しそうな顔。




裕福な家庭で育っている遥翔。

なにも不自由がなさそうなのに、なんであんなに苦しそうだったの…?




私は広い生徒会室を見渡した。


カーテンも閉めっぱなし、ベットのシーツはよれていて、さっきまで誰かが寝ていたことを教えていた。




もしかして遥翔…ここで寝泊まりしているのかな……。



色んな想いや考えごとをしていると、生徒会室のドアが開いた。






入って来たのは…



「アンタ、何者?」



涼しげに言い放つ
唯、だった_____。




何者?それって、どういう意味なんだろう。





「遥翔にあそこまで言わせるなんてな」

「……」

「俺は香月(かつき)唯。学年は3年、遥翔と同じだ」




遥翔…私の1個上だったんだ。
知らずに私、ため口使っちゃったよ…。




「アンタさ、秘書なんだろ?仕事やんなよ」

「仕事…?」

「遥翔のこと、追いかければ?あいつ、すげー不機嫌ずらして出てったけど?」



その言葉を聞いて、私の体は勝手に動いた。


勢いよく部屋を飛び出して、道の分からない校舎の中を走り回る。





頼り方なんて分からない。
甘え方なんて分からない。




でも…遥翔に甘えてみたくなったんだ。