ホームルームもあと数分で終わりを告げる。
…とうとう、スミレとは話せなかった。
気は楽だったけど、良心が痛んだ。
「じゃあ、萩野と井本はよろしくな」
「…はい」
私が小さく返事すると、先生は「解散」と言って、教室を後にした。
せっせとカバンに教材を突っ込む。
スミレより先に教室を出た。
不安な気持ちが、なによりも勝る。
……今すぐに、遥翔に会いたい。
「サクラ!!」
前に進もうとしていた足が、ビクつきながら止まる。
……動悸が早い。
私は、スミレの呼び止める声に恐る恐る振り返った。
なるべく、不自然に見えないように。
「バイバイ!」
「……っ」
何も知らないスミレの屈託のない笑顔。
心の中で「ごめんなさい」を何度もつぶやいた。
「…バイバイ」
ぎこちない笑顔で手を振って、息苦しさを紛らわせるように走った。
真っ直ぐ続く廊下を駆け抜け角を曲がった私は、トンッと壁に背中をつけて胸元を強くギュッと握りしめた。
呼吸が荒い。
意味の説明できない涙が、目に溜まる。
「…遥翔……」
弱々しすぎる私のか細い声が、放課後の少し賑やかな廊下で虚しく響いた。

